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骨吸収抑制薬のまれな副作用 — 顎骨壊死と非定型大腿骨骨折

骨を守るお薬のまれな副作用である顎骨壊死と非定型大腿骨骨折について。リスク、予防法、警告サインを正しく理解して安心して治療を続けましょう。

「骨⁠粗⁠鬆⁠症のお薬で、あごの骨が壊れることがあるって本当?」「太ももの骨が折れることがあるの?」インターネットで、こうした情報を目にすることがあります。

顎骨壊死(がっこつえし)と非定型大腿骨骨折(ひていけいだいたいこつこっせつ)は、骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネートやデノスマブなど、骨が壊されるのを防ぐお薬)のまれな副作用として報告されています。それぞれどんなもので、どのくらいの頻度で起き、予防に何ができるかを説明します。

これらの副作用はたしかにありますが、起きることはとてもまれです。そして、骨⁠粗⁠鬆⁠症を治療しないことによる骨折のリスクのほうが、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいと考えられています。お薬を怖がって自己判断でやめてしまうと、かえって危険です。

この動画はAI音声技術(Google NotebookLM)を使用して作成されています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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このページでわかること

  • 顎骨壊死がどんなもので、なぜ起きるのか
  • どんなときにリスクが高まるのか(とくに抜歯との関係)
  • 日頃の口腔ケアでリスクを減らせること
  • 非定型大腿骨骨折とはどんな骨折で、どんな方に起きやすいのか
  • 太ももの痛みという警告サイン
  • 主治医に相談するタイミング

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顎骨壊死(がっこつえし)について

顎骨壊死とは

顎骨壊死(MRONJ=薬剤関連顎骨壊死)とは、あごの骨の一部が露出したり、治りにくくなったりする状態です。骨吸収抑制薬を使用している方で、ごくまれに報告されています。

どのくらいまれなのか

骨⁠粗⁠鬆⁠症の治療で使う量(通常量)での発生頻度は、日本の診療報酬(レセプト)データの調査では、骨⁠粗⁠鬆⁠症の患者さん10万人あたり1年間に約23人(22.9人)と報告されています(顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023)。経口ビスフォスフォネート(飲み薬タイプ)での発生は、きわめてまれです。

一方、がんの治療で使われる高用量の骨吸収抑制薬では発生頻度がもう少⁠し⁠高くなりますが、骨⁠粗⁠鬆⁠症の治療とは用量も使い方もまったく異なります。インターネットの情報には、がん治療(高用量)についてのものが混ざっていることがあります。どちらの話なのかを見分けてください。

どんなときにリスクが高まるのか

顎骨壊死がもっとも起きやすいのは、抜歯(歯を抜くこと)をしたときです。歯を抜いた後の傷が治る過程で、骨吸収抑制薬の影響であごの骨の修復がうまくいかなくなることがあると考えられています。

ほかに、次のような場合もリスクが高まるとされています。

  • 歯周病が進行している
  • 口の中の衛生状態がよくない
  • 入れ歯が合わず、歯ぐきに傷ができている
  • インプラント手術を受ける
  • 糖尿病やステロイド薬の使用など、ほかの要因がある

予防のためにできること:お口のケア

顎骨壊死の予防でもっとも効果があるのは、日頃のお口のケア(口腔衛生)です。お口を清潔に保てば、リスクを大幅に下げられます。

骨吸収抑制薬を始める前に:

  • 歯科検診を受けてください。治療が必要な虫歯や歯周病があれば、お薬を始める前に治しておくのが理想的です。
  • 「骨⁠粗⁠鬆⁠症のお薬を始める予定です」と歯科医にお伝えください。

治療中は:

  • 定期的に歯科検診を受けてください(間隔は歯科医と相談してください)。
  • 毎⁠日のブラッシングとお口のケアを丁寧に続けてください。いちばん効く予防策です。
  • 歯科を受診するときは、「骨吸収抑制薬(お薬の名前)を使っています」と必ず伝えてください。
  • 歯科医から指示や注意点があれば、それに従ってください。

抜歯が必要になったら:

  • まず歯科医と主治医に相談してください。
  • 2023年の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパーでは、通常量のビスフォスフォネートでは、抜歯の際にお薬を休む必要は原則としてない、との見解が示されています。
  • ただし、最終的な判断は歯科医と主治医が相談して決めます。歯科医の指示に従ってください。

歯科医に骨のお薬を伝える場面

こんな症状があれば歯科医に相談してください

  • あごの痛みやしびれが続く
  • 歯ぐきから骨が見えている
  • 歯を抜いた後の傷がなかなか治らない
  • 歯ぐきの腫れや膿(うみ)が続く

これらの症状があっても、顎骨壊死とは限りません。それでも、早めに相談すれば、その時点でできる対応を受けられます。


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非定型大腿骨骨折について

非定型大腿骨骨折とは

太ももの骨(大腿骨)の付け根より少⁠し⁠下に起きる骨折で、通常の骨⁠粗⁠鬆⁠症性骨折とはタイプが違います。転んだりぶつけたりといった大きなきっかけがなくても起きることがあります。

誰に起きやすいのか

非定型大腿骨骨折は、骨吸収抑制薬を長期間(一般的に5年以上)使用している方で報告されています。

骨吸収抑制薬は骨が壊されるのを抑えるお薬ですが、長く使い続けると、骨の新陳代謝(古い骨を壊して新しい骨に置き換えるサイクル)が抑えられすぎて、骨がもろくなる可能性があると考えられています。ただし、この仕組みはまだ完全には解明されていません。

発生はとてもまれですが、使用期間が長いほどリスクが高くなるとされています。そのため、お薬を使い続ける期間は主治医が定期的に見直します。

太ももの痛みは警告サイン

非定型大腿骨骨折では、骨折の前に警告サインが出ることがあります。次のような症状に注意してください。

  • 太もも(大腿部)の痛みが続く
  • 足のつけ根(鼠蹊部)の鈍い痛みが続く
  • 歩くときや体重をかけたときに痛みが強くなる
  • ぶつけたり転んだりした覚えがないのに痛む

こうした痛みは、骨にひび(ストレス骨折)が入り始めているサインのことがあります。

太ももや足のつけ根に原因のわからない痛みが続く場合は、できるだけ早く主治医にお伝えください。 早い段階で見つかれば、お薬の変更や検査などで対応できます。

「歳のせいかな」で済ませず、骨吸収抑制薬を使っている方は主治医に相談してください。

長期使用と「休薬」の考え方

ビスフォスフォネートでは、非定型大腿骨骨折のリスクを減らすために、一⁠定⁠期⁠間⁠使⁠用した後に「休薬(お薬のお休み)」を検討することがあります。

  • 休薬のタイミングや期間は、骨密度や骨折リスクなどを総合的にみて主治医が決めます
  • すべての方に休薬が適しているわけではありません(骨折リスクが高い方は継続が勧められることもあります)
  • デノスマブは、自己判断で中断すると骨密度が急に下がるため、休薬の考え方が異なります。 必ず主治医の指示に従ってください

休薬が気になる方は、次の受診のときに主治医にご相談ください。

「休薬」は主治医が判断するものです。自己判断でお薬をやめないでください。


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バランスのとれた視点を持つために

最後に、治療しない場合のリスクと並べてみます。

リスクのバランス

骨⁠粗⁠鬆⁠症を治療しない場合のリスク 骨吸収抑制薬のまれな副作用
頻度 骨折は決してまれではない とてもまれ
影響 脊椎骨折・大腿骨近⁠位⁠部⁠骨⁠折は寝たきりや生活の質の大幅な低下につながりうる 多くの場合、早期発見で対処可能
予防 治療が最大の予防 口腔ケア、定期検診、警告サインへの注意で対応可能

骨⁠粗⁠鬆⁠症による骨折、とくに大腿骨近⁠位⁠部⁠骨⁠折(足の付け根の骨折)は、生活を大きく変えてしまうことがあります。国内外のガイドラインは一貫して、お薬を使うメリットがまれな副作用のリスクをはるかに上回るとしています。

副作用を知ったうえで、お薬を続けてください。


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主治医への質問リスト

次の診察で聞いてみたいことの例です。

  • 「私が使っているお薬で、顎骨壊死のリスクはどのくらいですか?」
  • 「歯医者さんに行くとき、何か伝えることはありますか?」
  • 「お薬を使い始めてどのくらい経ちますか?休薬を考える時期ですか?」
  • 「太ももに痛みを感じたら、どうすればいいですか?」
  • 「骨密度の検査は次はいつですか?」

気になることは、そのままにせず診察で聞いてください。

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まとめ

  • 顎骨壊死は骨吸収抑制薬のまれな副作用で、とくに抜歯のときにリスクが高まります。経口ビスフォスフォネートではきわめてまれです
  • 日頃のお口のケアと定期的な歯科検診がいちばんの予防策です。歯科ではお薬のことを必ず伝え、歯科医の指示に従ってください
  • 非定型大腿骨骨折は、骨吸収抑制薬の長期使用(とくに5年以上)で起きることがある副作用です
  • 太ももや足のつけ根の痛みは警告サインです。原因のわからない痛みが続いたら、すぐに主治医に相談してください
  • 休薬は主治医と相談して決めます。自己判断で中断しないでください
  • 骨⁠粗⁠鬆⁠症を治療しないリスクのほうが、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいとされています
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今日からできること

[!warning] お願い この記事を読んで不安を感じても、お薬を自己判断でやめないでください。必ず主治医にご相談ください。

  • 最後の歯科検診から半⁠年⁠以⁠上⁠経っていたら、予約を入れてください。
  • お薬手帳に「骨吸収抑制薬を使用中」と書いてあるか確認してください。歯科でそのまま見せられます。
  • 毎⁠日の歯みがきを丁寧に。口腔ケアが顎骨壊死のいちばんの予防策です。
  • 太ももに原因のわからない痛みがあれば、次の受診を待たずに主治医に連絡してください。
  • 気になることがあれば、質問リストを次の受診に持っていってください。この記事をスマートフォンで見せながら相談してもかまいません。
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よくある質問

Q. 骨⁠粗⁠鬆⁠症のお薬で顎骨壊死になる確率はどのくらいですか?

骨⁠粗⁠鬆⁠症の治療量では、10万人あたり1年間に約23人と、まれです。飲み薬タイプのビスフォスフォネートではさらに低いとされています。がん治療で使われる高用量とは大きく異なるので、分けて考えてください。

Q. 歯医者さんに行っても大丈夫ですか?

はい。定期的に歯科を受診すること自体が予防になります。受診の際は「骨⁠粗⁠鬆⁠症のお薬を使っています」と伝えてください。虫歯の治療やクリーニングなどの一般的な歯科処置は通常どおり受けられます。抜歯やインプラントなどの外科的処置が必要な場合は、歯科医と主治医が連携して対応します。

Q. 抜歯が必要な場合、お薬を休む必要がありますか?

2023年の学会ポジションペーパーでは、通常量のビスフォスフォネートでは抜歯の際にお薬を休む必要は原則としてない、との見解が示されています。ただし、最終的な判断はケースごとに歯科医と主治医が相談して決めるので、歯科医の指示に従ってください。

Q. お薬を何年も飲んでいますが、非定型大腿骨骨折が心配です。

主治医は治療期間や骨密度の推移を定期的に確認し、休薬が必要かどうかも含めて判断しています。気になる場合は、次の受診で「休薬について相談したい」と伝えてみてください。

Q. 太ももの痛みがあります。非定型大腿骨骨折でしょうか?

太ももの痛みは、筋肉の疲れや関節の問題など、ほかの原因で起きることも多く、非定型大腿骨骨折とは限りません。ただ、骨吸収抑制薬を使用中で、原因のわからない太ももの痛みが続く場合は、念のため主治医にお伝えください。レントゲンやMRIなどの検査で確認できます。

Q. この副作用が怖いので、お薬をやめたいのですが。

骨⁠粗⁠鬆⁠症を放置した場合の骨折リスクは、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいとされています。お薬に不安がある場合は、自己判断でやめずに主治医にご相談ください。お薬の種類を変えたり、治療計画を見直したりすることもできます。

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参考文献

  • 日本骨⁠粗⁠鬆⁠症学会・日本骨代謝学会・骨⁠粗⁠鬆⁠症財団 編『骨⁠粗⁠鬆⁠症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • 顎骨壊死検討委員会「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
  • Shane E, et al. Atypical subtrochanteric and diaphyseal femoral fractures: second report of a task force of the ASBMR. J Bone Miner Res. 2014;29(1):1-23.
  • Black DM, et al. Bisphosphonates and fractures of the subtrochanteric or diaphyseal femur. N Engl J Med. 2010;362(19):1761-1771.
  • Khan AA, et al. Diagnosis and management of osteonecrosis of the jaw: a systematic review and international consensus. J Bone Miner Res. 2015;30(1):3-23.
  • 骨⁠粗⁠鬆⁠症財団「骨⁠粗⁠鬆⁠症について」https://www.jpof.or.jp

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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医療監修

加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)

東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院

最終更新:2026年10月17日

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